全社戦略とM&A~全体像~

弊社のM&Aアドバイザリーサービスに関する最初のコラムのテーマは、全社戦略とM&Aです。これは、企業経営におけるM&Aの位置づけを考えるときの出発点となります。

M&Aは、全社戦略の中でどのような意味合いを持ち、どのような効果をもたらすのでしょうか。また、全社戦略において異なる意味合いを持つそれぞれのM&Aパターンは、トランザクションやPMIにどのような違いをもたらすのでしょうか。

このコラムでは、これらに対する弊社なりの理解をご説明したいと考えています。

既に多くの(おそらくほとんどすべての)M&A教本で触れられている通り、M&Aの戦略的意味合いをひとことで言えば、「選択と集中」という言葉に尽きます。つまり、経営戦略上M&Aは、いわゆるポートフォリオマネジメント変革の推進の手段として説明されます。

それでは、M&Aによるポートフォリオ変革には、具体的にどのような方向性があり得るのでしょうか。



上図は、ボストンコンサルティンググループのPPMマトリクスの各象限に位置する事業が、それぞれどのようなM&Aを行うことで、ポートフォリオ変革に貢献し得るかを示した図です。(弊社整理)。

最初の①はいわゆる水平統合(同業買収)型のM&Aです。これはさらに、攻め(市場獲得)のM&Aと、守りのM&A(コスト効率化)に細分化されると考えられます。ここでは、水平統合A型、B型と呼称しています。

※いわゆる攻め(水平統合A型)のM&Aは理論的にはCashCowの事業だけではなく、Dogsの事業にも適用され得ます。しかしここでは、Dog事業に適用されるM&Aは「起死回生型」として別分類をしています。

次の②はいわゆる垂直統合といわれるパターンです。M&Aにより自社のバリューチェーンを強化し、競争優位性を高めるのが狙いです。メーカーによる販社の買収や、研究開発に強い他社の買収などがこれにあたります。ケイパビリティ~の獲得という意味では、魅力的な工場用地を持っていたり、強い特許や、免許を持っている会社の買収なども、広義においてはこれにあたると考えられます。

次の③はいわゆる多角化のM&Aです。自社の既存事業ドメインとは離れていても、成長市場で強い競争優位性を持っている会社を買収して、自社に取り込むという狙いです。GEや商社など、ポートフォリオ管理が経営の根幹にある会社で多くみられるM&Aです。

次の④はあまり多くみられるM&Aではありませんが、ここでは起死回生型と呼称します。たとえば国内は競争が厳しく、市場も成熟している厳しい事業でも、海外の一部ニッチエリアではまだ勝負できる可能性に賭けるといった、いわば「起死回生型」です。ただし、このタイプのM&Aはやはり成功難易度も高くなると考えられます。

最後の⑤は撤退手段としてのM&A、つまり子会社や事業部門の売却です。日本企業の苦手分野ともいわれることが多いようです。またトランザクションの実施にあたっても他のタイプと同様に様々な論点があります。

このコラムでは、全社戦略=ポートフォリオ変革の方向性に照らして、M&Aを5つのタイプに分類してみました。もちろん、ターゲット企業の属性等に応じてM&Aには複数の目的や狙いがあります。従って、このような分類がすべてのM&A事例に完全に当てはまるわけでないことは明白です。しかしM&Aによるポートフォリオ変革の方向性を細分化することで、それぞれにおけるディールの特徴や留意点をある程度整理し易くなるのではないかと考えています。

次回以降のコラムでは、これら①~⑤について、それぞれの特徴やトランザクション実行段階、PMI段階でどのような困難や留意点が生じ得るのかを整理してみたいと思います。

0回の閲覧0件のコメント